Biological Stories 6
第6回 多細胞生物の死は仕組まれた運命
(第3回)個体の老化
老化といえばなにを想像しますか?
皮膚にしわが寄る、白髪が増す。腹部の辺りがたるんでくる・・・。これが個体における老化の例です。
長く使い続けた自動車などの調子が悪くなるのと、長い時間生きた生命にダメージが蓄積しているのは、ある程度共通の現象です。
ただ、自動車などがどこか壊れてしまったら、修理に出さない限り永久に回復することはありませんが、生物には「自己修復機能」がありますので少しくらいの傷なら治る性質があります。
この「自己修復機能」は寿命の長い生物に必要不可欠な能力です。この能力がなければ人間の寿命がここまで伸びることは不可能だったでしょう。ちなみに寿命の短い昆虫などには自己修復機能はないとも言われています。
すぐれた自己修復機能を持っているにもかかわらず、われわれの肉体はなぜ老化してしまうのでしょうか。
その最大の原因はわれわれの自己修復機能が低下してダメージを回復できなくなること、さらには細胞が分裂能力を失って新しい細胞をつくって組織を補うことができなくなることだと考えられています。
個体が年老いるということ
「健康に最も良くないことは何だと思いますか?」
この質問の答えとしてよく使われる皮肉な決まり文句があります。
「長生きです」(よく言われる決まり文句は「長生きは健康に悪い」)
「長生き」は「ひと一倍健康である」ということを表していますので、このフレーズは一見意味不明です。
しかし常識のフィルターを外すと、この言葉には深い意味が込められていることに気がつくでしょう。
じつは若い人が行う不摂生よりも高齢者の日常的な活動の方がよほど個体死の引き金になる可能性が高いのです。先ほどのフレーズは、不摂生のせいで体が弱った若年者より健康に気を配っている平均的な高齢者のほうが肉体的には衰弱しているという事実を皮肉な言い回しで表現したものなのです。
ただこの表現だと高齢者はみな等しく体が弱っていて、(見た目の違いはあっても)同年齢者の衰弱の程度は同じであるかのように感じるかもしれません。
…実際、かつてはそのように考えられていましたが、現在では生理学的なデータの蓄積が進み見解が変わりつつあります。
現在では人間の生理機能は年齢と共に徐々に低下していくのではなく、ある時点から急激に低下することが明らかになっています。そして今では「死の引き金」となる出来事が起こるまでは、機能の低下は穏やかだと考えられています。
このことは体の一部の老化が別の箇所の老化を促進し、さらにそれが他の箇所の老化を促進するという悪循環によって人間の老化の大部分が引き起こされていることを暗示しているのです。
(第6回 終わり 文責:上田@生物)
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