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Biological Stories 27


          第27回 女性が進化の方向をきめる?(7) 
  
              いのち短し恋せよ?男子
   
 もし、男性と女性が取っ組み合いのケンカをしたとすれば、よほど特殊な状況でない限り男性のほうが勝つでしょう。
 これは、男性のほうが女性よりも生物学的に強靭だと言うことをあらわしているのでしょうか?
   
 いえ。そうではありません。
 意外に思えるかもしれませんが、じつは女性のほうが生物としてははるかに強靭です。男子は生命力が弱く死にやすい存在なのです。
    
 平成18年簡易生命表(下のアドレスを参照)によりますと、女性の平均寿命は85.81年あるのですが、男性の平均寿命はわずか79.00年、です。
     
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life06/01.html   
   
 以前にも書きましたが、生物はじわじわ直線的に老化していくのではなく、1箇所でもどこか機能しないところが出てきたら、そのあと雪崩を打ったように一気に老化するのです。
 おそらく男性の内臓のほうがずっともろいのでしょう。
 (ここでは「もろい」という言葉を「壊れやすい」か、「小さなダメージを回復できなくなる日が早く来る」、という意味で使っています。)
 女性よりも内臓が機能しなくなる現象が早く起こりそれが寿命を縮めているのでしょう。
   
 ただし男女差のうちで目立つもので、それ以外にも目に付きにくい差があるのです。
   
 まず、新生児の出生数の比にご注目ください
 新生児の男女比は21対20ほどです。どの国でもおおよそ男性が5%〜6%ほど多くなっています。
 このまま男児女児とも全く同じ原因・割合で死んでいくなら、結婚適齢期に男性の数が女性の数を上回ってしまいます。理想的に結婚相手が見つかった場合でさえ男性のうちの6%ちかくが結婚相手を見つけられないことになります。これは争いの原因にならなかったのでしょうか?
   
 実際には現代になるまでこの差はあまり問題にならなかったようです。
 なぜなら、幼児期の男児の死亡率が女児に比べてずっと高く、結婚適齢期までに男性人口が女性人口とつりあうよう減少していたからです。
   
 今では意味が良くわからなくなってしまった「一姫二太郎」なる言葉があります。
 この言葉は医学が発達していなかった頃の男児の生存率の低さに関係しています。子育てに不慣れな母親の初子が男児であると死亡する危険性が高いが、丈夫で育てやすい女児が初子で、その子で子育てに慣れた後に男児を授かれば、望ましいという意味なのだといわれています。
   
 江戸時代の乳児死亡率の驚くべき高さについてはこちらのサイトに記述がありました。
    
http://blog.tpa-kitatama.jp/index.php?blogid=4176&archive=2007-11
     
 以下は上記のサイトからの引用です。
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 ・人口の増減は食料生産の向上や飢饉、疫病の流行、戦争などに影響を受けますが、人口がほぼ一定した江戸期の日本人の平均死亡年齢は男女とも27・8歳前後で飢饉、疫病の流行期には17・8歳であったとの記録があります。
  現代からすると異常な低さですが、この平均死亡年齢は零歳における平均余命で、この異常な低さをもたらしたものは乳幼児死亡率の異常な高さにありました。
 この時期の乳児(零歳児)と幼児(1〜5才)の死亡率は全死亡率の70〜75%も占めており、こうした乳幼児の大量死亡が江戸時代の特に農民の平均寿命を28歳前後に押し下げていたわけです。
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 乳幼児の死亡率が高く、男の子が死にやすかったからこそ「一姫二太郎」などの言葉も生じたのでしょう。
  
           受精時の性比
  
 さらにもうひとつ。
 男女を決定する遺伝子を性染色体と呼び、女性はX染色体と呼ばれる性染色体を2つ。男性はXとYを1つずつ持っていることを前回書きました。そして精子を作るとき、精子内にはXY染色体のどちらか一方しか入れることができないため、Y染色体の入った精子と、X染色体の入った精子の2種類が存在することもお話しましたね。
   
 じつは、このXY二つの染色体は、大きさ(つまり染色体内の遺伝子の量)が全く異なります。
 X染色体はヒトの染色体の中では比較的大きなものです。
 以下に示したサイトの情報によれば、X染色体はヒトのもつ7番目に大きい常染色体(遺伝子数1,378 塩基対数1億6,300万)に匹敵する大きさ(遺伝子数1,098 塩基対数1億6,300万)を持つそうです。
   
http://wpedia.mobile.goo.ne.jp/wiki/5003/%90%F5%90F%91%CC/6/
    
 それに対しY染色体は小さい(遺伝子数 78 塩基対数5,100万)染色体です。大きさでいえばヒト常染色体のうちで最小のものである21番染色体(遺伝子数337塩基対数4,500万)や 22番染色体(遺伝子数701塩基対数4,800万)よりやや大きいにもかかわらず、遺伝子(遺伝情報のうちRNAやタンパク質となって実際に働く部分)量が異常に小さいという特徴があります。
   
 このように、X染色体とY染色体では大きさや重さそのものに大きな差があるため、染色体を詰め込んだ精子核にも重さの違いあります。ところが遺伝情報を運ぶ精子の尾部に関しては、どの精子に関してもほとんど差はありません。
 結果的に、Y染色体を含むやや軽い精子はすばやく卵に達することができるため、より高い確率で卵と受精できることになります。(今回改めて資料を調べてみたところ、確たる資料が出てきませんでした。曖昧な記憶に頼って書くのは心苦しいのですが)受精した時点での男女の性比はほぼ2:1であるという記述を見たことがあります。
   
 つまり、ここには受精した時点では男児は女児の2倍ほどもいたはずなのです。しかし無事に出生できた数を比較すると1.05:1になるという恐るべき事実があるのです。
   
 さて、次回は男性がなぜこんなに生物学的に脆弱なのかを考えていきたいと思います。
  
 
 (第27回 終わり。 上田@生物)
  
  
From 住吉校の部屋
 
 

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