Biological Stories 48
第48回 センター試験前日に眠れない人のために
ついにセンター試験がやってきました。
人生において十指に入る大イベントですから、既に大変な緊張をしている方もおられるでしょう。
ですので、本日は予定を変更して、試験前日に眠れなくなった場合、どのように対処すればよいかをお話したいと思います。
大脳がなくても生きていける?
話は変わりますが、不幸にして片手や片足を失ってしまったとします。
さて、手や足を失えば、我々は死んでしまうのでしょうか??
負傷時に適切な対処がなされれば(素早く止血し、その後も適切な医学的処置を施されたとすれば)、きっと生き残れると思います。
勿論、色々と不便になりますが、少なくとも生き続けることは出来るでしょう。
では大脳がなくなってしまったらどうでしょう?
大脳は「意識の中枢」です。
外の世界からの情報を受け取ること(感覚)、筋肉を働かせて体を動かすこと(運動)、そして情報をもとに振る舞いを決めること(判断)。いろいろ考えてみること(思考)、あとは人間にしかできないような高度な知的行動、それだけに留まらず話すこと、歌うこと、絵を描くことも、全て大脳の働きなのです。
ですから、大脳がなくなれば、人眼らしさの全てが失われます。
大脳は人間らしさの源なのです。
さて、大脳が失われた場合、体を動かすことが出来なくなります。ですから、自然界では確実に飢え死にします。
しかし、現在の高度に発達した医療技術をもってすれば、(栄養は点滴で補給するのです)大脳が死んでしまった人を長期間にわたって生かし続けることが出来ます。
大脳が死んでしまった状態を「植物状態」、そういう患者を「植物人間」と呼びます。
ヒトは、たとえ大脳が死んでしまったとしても、その下位中枢に当たる「間脳・中脳・延髄」が生きてさえいれば生き続けることが出来るのです。
ここで整理のために、セキツイ動物の中枢神経をまとめた概念図、図1を見ながら脳の働きを復習してみましょう。

【図1 脊椎動物の中枢神経】
まず、この図で「大脳皮質」とある部分が、人間らしさを司っている部分です。
その内側の「辺縁系」とある部分は、高校の教科書的には「大脳辺縁系」と称されたり、「(大脳)古皮質」、「(大脳)旧皮質」と称されたりする部分です。
この部分は「本能」や「単純な感情」を司っている部分でよくテレビなどで「は虫類脳」などと紹介されたりする部分です。
外の世界の、人物や出来事に対して、好きとか嫌いとか、恐ろしいとか愛してるとかそういう感情の中枢が、この部分です。
この部分は感情の中枢であると同時に、後述する「間脳視床下部」と密接に連絡しています。
間脳視床下部は自律神経とホルモンを介して内臓諸器官を調節する働きを持っているのですが、辺縁系と間脳視床下部が多くのニューロン(神経細胞)で結ばれているため、感情が内臓に影響を及ぼすという現象が起こるのです。
そして、間脳から脊髄にかけて「中脳・延髄」と並んでいます。
この3つの脳は「ヒトが生きるために生きるためにどうしても必要な部分」なので、ひとまとめに扱われ、「脳幹」と呼ばれます。

【図2 脊椎動物の脳幹】
大脳が死んでしまっても、脳幹が生きていれば「生きている」とあつかわれる(植物の状態)のですが、脳幹が死んでしまえば、たとえ心臓が動いている状態でもそのヒトは「脳死」と言う扱いになります。
脳死の状態は多くの国で「ヒトの死」として扱われています。
大脳だけでは生きていけない
ところで生物の授業で、脳死の定義を上記のようにならうと、疑問がわいてきませんか??
・・・脳幹が死んでいて大脳が生きているヒトは、脳死扱いになるのか生きているヒトとして扱われるのか、と。
下の図3をご覧下さい。

【図3 脳幹と大脳】
図を見て頂けばおわかり頂けると思いますが、大脳は単独では生きることが出来ません。
脳幹部からの「賦活化(活性化)」を受けて働いているのです。
脳幹には内臓諸器官の働きを調節する働きと共に、それより上位の脳を賦活化(活性化)する働きがあるのです。
ですから、脳幹が働きを失うと、遅かれ早かれすべての脳が大働きを失って(全脳死して)しまいます。
センター試験前夜、眠れない!
明日、センター試験だ!という認識は大脳をこの上なく興奮させます。
この興奮は脳幹にも伝えられますので、大脳だけでなく脳幹も極度に興奮します。
この脳幹の興奮により更なる大脳賦活化(活性化)がおこり、大脳がますます興奮して覚醒状態を引き起こすため、眠れなくなると考えられます。
このように、眠れぬ夜を過ごす受験生は全国にたくさん居るはずです。
一生懸命頑張ってきた受験生ほど、プレッシャーで眠れぬ夜を過ごすことになるでしょう。
さて、皆さんは、眠れぬセンター試験前夜をどのようにして過ごせばよいのでしょうか?
・・・単刀直入言います。
何もしないのが最善でしょう
前夜に眠れないことを極度に気にして、眠ろうと焦り、単語を見直したり問題を解き直したり、いろいろ脳を使う活動をおこなうのは、あまりお薦めできません。
試験前夜の極度に緊張し活性化した状態の脳で問題を解けば、最高に上手く解けるはずです。
しかし、試験の前に脳を疲労させれば試験にのぞむ頃には疲労している危険性があります。
眠れぬ試験前日に焦って色々あがき、脳を疲労させて結果的に普段の能力以下の実力しかだせなくなる受験生が、毎年何人も居るはずです。
皆さんにあえていいます。
試験の前日眠れない場合、
あせらず心を落ち着け、眠れないのはみんな同じだと心に念じながら、あえて何もせず、脳のスタミナを温存させる作戦で行きましょう!
極度に興奮した大脳は、最高の能力を発揮できる状態にあります。
くたびれさえしなければ勉強の成果がストレートに現れるはずです!!
大丈夫です!!
初日の試験でくたびれはてるので、2日目の夜はすぐに眠れますよ!
皆さんの健闘をお祈り致します。
(第48回 終わり。 文責:上田@生物)
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