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Biological Stories<第54回>

第54回 亜鉛を食べよう(前)

 家族が寝込んでいると、気分が滅入るものです・・・。

 ほんの一週間前、家内が手術を受けたのですが、思ったより回復に時間がかかっているようで元気がありません。

 受けたのはまぶたを切開してまつげが目に入らないように調節する手術で、左右合わせて二十針ほど縫ったようです。体の負担は相当だったと思います。
 すでに術後一週間以上経過していますが、いまでも目の周囲に内出血のあとが残っていて痛々しいのです。
 彼女の傷が早くなおるよう、亜鉛が高濃度に含まれた栄養補助食品を摂取するように勧めています。
 中学高校と理科を勉強していると、亜鉛といえばすぐに電池だの希塩酸と反応させて水素を発生させるだのを連想してしまいがちなのですが、生体にとって亜鉛は非常に重要な元素なのです
 …今週は亜鉛もふくめたイオン化傾向の大きな金属に関してお話ししていきましょう。

 イオン化列

 ちょっとここで「イオン化列」と「イオン化傾向」についてお話しします。
 
 イオン化傾向とは、水中での金属の錆びやすさの度合いと考えて下さい。イオン化列とは色々な金属をイオン化傾向の順に並べたもの、すなわち金属を錆びやすさの順に並べたものだと思ってください。
 (厳密な定義は化学の授業で学習して下さい)
 
 K>Ca>Na | >Mg>Al | >Zn>Fe>Ni>Sn>Pb| >(H) | >Cu>Hg>Ag | >Pt>Au
 
 最初のNaまでのグループはきわめてイオンになりやすい金属です。
 つまり錆びやすいのですが、これが「錆びる」などという穏和な表現からはほど遠いほど過激に反応するのです。
 K〜Naまでの3元素は、いわゆるアルカリ金属・アルカリ土類金属に属す自然界きっての過激派です。(以下便宜上この3元素を過激派金属と呼ぶことにします。同類の元素としてはLiなどがあります)
 なにしろ金属片を冷水中に入れるだけで、「水素」を発生させながら猛烈な勢いで錆びていき、しかもその際に多量の熱を発生させるのです。
 その反応熱で発生した水素と空気中の酸素と反応し、燃焼(実感としては爆発に近い)を引き起こすのです。
 
 このようにアルカリ金属・アルカリ土類金属は使い方を間違えば、爆薬になってしまいます。現にLi電池で爆発事故を引き起こし死者をだした国もあります。
(3週間前にUPした「第51回 妖精のくれた金属」の続編として「悪魔がくれた金属」と題してNiやLi と電池についての話を予定しております。こちら現在資料を収集中ですので少々お待ちください)

 科学・技術の進歩は日進月歩なので、かつての技術力で扱いきれなかった反応性の高い金属を利用できるようになりました。
 その結果、より高性能で利便性の高い電池が作られるようになりました。
 ただし、「反応性が高い」ということは「危険である」ということでもあります。

 高性能な新製品は高価です。
 高価なのは、もちろん「開発にかかった費用の回収」という事もありますが、危険物を安全化した代償という意味もあるのです。
 安全性を高めるためには不良品を厳しく取り除く必要があります。
 しかし、基準を厳しくして不良品を沢山出してしまえば製品の歩留まりはどんどん悪化し、当然ですがその分のコストがかかってきます。

 アルミニウム

 次のMg、Alも相当イオンになりやすい金属です。さすがに冷水に浸したぐらいでは爆発しませんが、熱湯中や高温に加熱した水蒸気の中で反応してしまいます。つまりこれらの金属も、イオン(さび)の状態でいる方がはるかに安定で自然な状態ということになります。
 Al(アルミニウム)などは、イオン(さび)から金属の状態に還元するのに大量の電気エネルギーを必要とするため、19世紀に至るまで工業的な製法は確立されませんでした。皆さんが化学の授業でAlの工業的製法として習う「融解塩電解」は何と1886年(結構最近!)に開発されたものです。
 名から推測できるとおりこの製法は大量の電気を要します。ですので19世紀から20世紀の初頭にかけて、アルミニウムの生産効率は低いものでした。
 Alが工業的に安定して大量生産されるようになるのは、発電と大規模送電体制が確立した20世紀中盤から20世紀後半にかけてです。皆さんご存じのアルミ缶が日本中で出回るようになったのは70年代から80年代にはいってからで、結構最近のことなのです。
 
 ちなみに、「1円玉を製造するのに1円以上のコストが掛かっている」というは、アルミの高価さを表すのによく使われる表現です。実際に1円玉の製造には2円程度のコストがかかっているようです。
 
 では、1円玉を元のアルミニウムの塊に戻せば大もうけできるのでしょうか?
 まず通貨を変造すると、「捕まってしまうので割に合わない」(ココ重要)と言っておきましょう。
 
 しかし、捕まらなかったとしても、やはり一円玉を鋳つぶす行為は推奨できません。
 なぜなら一円玉に必要なアルミニウム1gの原価は0.7円程度でしかないからです。
 残りは製造費。何とここで1.6〜1.8円のコストがかかって2円以上の製造費になってしまうのです。
 
 さて、今回表題に取り上げた亜鉛はAlやMg等よりは反応が穏和ですが、イオン化傾向が中くらいの金属の中では最も反応性の高い金属です。
 次回はこの亜鉛が、生体内でどのように利用されているかお話ししていきたいと思います。
 
 

(Biological Stories<第54回>終わり。文責:上田@生物)
 
 
From 住吉校の部屋
  

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