兵法書を読み解く〜古の知恵の宝庫をたずねて〜
生きることは戦うことと同じです。
それは古代の手に武器をとって戦う頃から変わることはありません。
毎週水曜日は、様々な兵法書からエッセンスをお伝えしていきましょう。
仁ありて信なければ、返ってその身を敗る。―――『司馬法』
「仁」とは、わかりやすく言えば、思いやりのことです。
リーダーにこれがあることによって、部下から慕われ、個々に力を尽くさせることができます。
反面、こればかりでは、部下との関係が馴れ合いになってしまい、組織運営にも支障をきたす恐れがあります。
そこで、必要とされるのが「信」、つまり嘘をつかないこと、約束を守るということですね。
秦王朝に対し、各地で反乱の烽火があがり始めたころ、山東の鉅野でも、近在の若者たちが、彭越という豪傑に、自分たちの首領になって欲しいと頼み込みました。
彭越は最初は断ったのですが、彼らの熱心な頼みに応じてやむなく引き受けます。
皆で翌朝の日の出とともに集まろうと約束し、遅れた者は斬罪にすると取り決めました。
ところが翌朝、遅刻した者が数十人、中には昼ごろに来た者までいた有様でした。
彭越は、「私は諸君のたっての頼みでやむなく引き受けたのに、遅刻する者がかくも多い。全員を殺すわけにはいかないから、最も遅れた者だけを殺すことにする。」
こう言って、約束どおり容赦なく一人を斬り捨てたのです。
皆驚きおののいて、仲間同士の甘えは一挙に払拭されたという話です。(MH)